ある日本人経営者がこんな声を漏らしていたと、中国人の友人が教えてくれたのですが、私の一言で苦笑いしていました。

春節を終えてようやく、仕事モードになりつつある中国。日本と同様に春節を挟み忘年会や新年会があるのですが、友人の中国人が知り合いの日本人と新年会をしていた時の話。

「借りている事務所の家賃がまた上がる。費用対効果を考えると引っ越そうかな」そんな言葉を漏らしていたそうですが、私が友人に「家賃の中抜き額が大きいからじゃ?」と話すと、友人の中国人は苦笑いして「確かにね」と一言。

「中抜き額が大きい」と言うのは、例えば会社Aがオフィスビルに支払う額が毎月10万元とした場合、オフィスビルから会社Aのスタッフへキックバックされ、「中抜き」されている額の事を指します。

よくある話ですが経営者の日本人は中国語が分からないのと、面倒な契約関係は自分が信用するスタッフに対して、ビル探しや契約を依頼するのですが、そのスタッフはビル側と2つの交渉を行う場合があります。

それは会社スタッフとしてビル契約の交渉を進めるのと、契約後に毎月自分に幾らキックバックをしてくれるかの交渉です。

性善説が大好き日本人の感覚からは「そんな事はあり得ない」と、思うかも知れませんが、実際によくある話です。「うちに限って」と言っている会社に限って、起きているかも知れません。

全ての中国人に該当することではありませんが、責任を与えると「責任の範囲であれば何をしてもいい」と思い、日本人から「指摘を受けなければOK」なのと、「見つかってもあの日本人は私を信用しているのでお咎めないだろう」と、日本人は軽く思われているので、あの手この手と中抜きを考えます。

こんな話もありました。仕事で欠かすことのできないネットワーク周りのインフラ。この契約は一度締結すると大きなトラブルがない限り、仕事に影響がでるので変更することはありませんが、新規契約を目指すために責任担当者とこんな話をする営業スタッフが。「契約料は幾ら、アナタの口座には毎月幾ら」という話。

これこそ正にキックバッグの王道かも知れませんが、一旦両者で契約した費用を引き落としした後に、契約先の通信会社または営業スタッフから担当者へ毎月一定額を支払うのです。

また会社に所属した状態で自分で会社を立ち上げて、立ち上げた会社から商品購入を行う手法。

例えば展示会や企業ブースで配るノベルティグッズの選定を行う、企画室などの責任者が自分でノベルティ販売元の会社を立ち上げて、社内で企画やグッズ選定を行い、最終的には自分の会社経由で購入。

昔の日本でもあっていたのかも知れませんが、今の中国でも同じようなルートでグッズ購入して中抜きしている事も。

大抵このような責任者は日本語が堪能で、日本人上司や責任者と懇意にするのが上手いため、日本人は全面的に安心して丸投げ。そうなったらしめたもので、アレコレ勝手にし放題になってしまいます。

立ち上げた会社等の情報は担当者の名前や電話番号、住所などで会社登記をしている場合も多く、少し中国語ができれば登記している会社名をすぐに調べることができます。

残念ながら中国語が分からない日本人は、こうやって自分が信じている中国人にいつまでも騙され続けます。「泣いて馬謖を斬る」という言葉がありますが、これができない日本人はいつまでも中国人に舐められてしまうのです。

いつも見ていて不思議に思うのは「なんでこの中国人を信用しようと思ったのか?」という経緯。いい中国人、悪い中国人を見分ける目を養わないといけませんね。