日中間の差ってこんな考え方にも大きく影響していると思います。日本人的には当たり前で大切な考えですが、中国の現場レベルに落とし込むと本当はそんな考えって不要なんじゃないの?と思った出来事でした。

久しぶりに上海に住む日本人と話をする機会がありました。そこで話題になったのが「中国の自動化」について。結構トレンドな内容で興味深く、ご意見を聞いていました。

単純作業(単純労働)の部分を機械やAIを利用して自動化。これまで単純作業を担当していた人材には人にしか出来ない付加価値の高い分野にシフトさせていく、というお話。個人的には正しい話だと思うのですが、ただ「日本だったら正しい」と条件をつける必要があると思っています。

話をされていた方は「中国でも同様に」という事で話しをしていたのですが、中国に限った話で考えると少し違和感があるように感じました。

人間は可能性を秘めているので、確かに付加価値の高い分野にチャレンジさせるというのは大切な話。ただ本人にチャレンジする気持ちがあるのか?という部分や、中国ではそんな悠長に時間を使って人を教育しても離職率が高いので、意味がないという点があります。

中国で機械化やAIで自動化する一つの目的に離職率が高い人材を繰り返し同じ事をさせるくらいなら、文句も言わずに黙って正確にルールを守って繰り返し作業をするロボットやAIを採用した方が良い、という考えがあるように感じています。

付加価値の高い仕事にシフトよりも、辞めていくスタッフの代わりに安定した労働力確保という意味合いもあるように思っています。

また中国でよくある話ですが仕事が便利になると自分の仕事が減る。つまり自分の担当の仕事が減るので、もしかするとそれ以外の余計な仕事を任されるのでは?もしくは整理要因になってしまうのではないか?または自分の発言権や立場が危うくなるのでは?と思って機械化や自動化に対して抵抗してくる方たちが一部いるという点です。

結局この発想の人たちは付加価値の高い仕事をやる事より、既存の仕事をそのまま保持しつつ、年々給与アップはして欲しい。という費用対効果の薄い虫の良い発想を持っている場合もあるので、「付加価値が高い仕事にチャレンジ」をという発想以前の問題だったりします。※この発想は中国人に限らずですが。

工場に足を運ぶことが多いので工場で働く中国人スタッフを見たり話をすると、隣の工場のスタッフ募集が100元でも高ければ転職する人も多く、ようやく仕事を覚えてもらったと思ったら退職というというのは日常茶飯事です。

今まではどうやって繋ぎ止めておくかという福利厚生も大切だったのですが、技術革新のお陰で人がやっていた事や指示してもやらない事はロボットやAIに代わりに働いてもらって、指示を聞かないスタッフは削減しているという部分があります。

そのため中国の製造業という限られた点で考えると、無駄口が多く勤勉に働かない人は機械を採用した方が長い目で見て割が良い。という発想が成り立っているように感じています。

しかしモチベーションが高い、チャレンジ精神があるスタッフは積極的に責任あるポジションで仕事をさせて給与を上げる。そうするとしゃかりきに働く。そんな環境が整っているのも事実。ハングリーな人は中国人には多いのです。

そんな考えや背景があるので、話を聞き終わった後に私と中国人のパートーナーと顔を見合わせて「ちょっと実情を知らないね」という一言で終わったのでした。

意外に感じられるかも知れませんが中国の現場の本当の声や本音を知らない形で、日本側の本部の常識や指示が最優先になってしまい、中国に落とし込んで失敗する。身動きが取れなくなる、意外と多い失敗事例です。

日本は日本、海外は海外なのですが、決定権を持っている方が意外と国外事情を知らないって多いんですよね。海外事情なんてイチイチ落とし込む時間なんて無いとか。国外を知っているスタッフが下手に意見をすると目をつけられるので遠慮しているとか。

日本人向けに都合の良い感じで話をする分には良いのですが、現場を理解しない人の話がそのまま日本側で説得材料として話が進んでしまい、結局は現場側がなじまずトラブルだらけになってしまう。うまく物事を進めるにはやはり現場にヒントがあるんだな、と思った出来事でした。